秋田禎信
(ブリタニア大陸でPKされて泣いてた人。
ホルモンについて熱心に議論する男子高校生とすれ違った小説家でもある。
文章力がかなり高い人。
魔術士オーフェン2部までと無謀編は読んだ。4部は読んでないので好き嫌い以前の状態です。
『魔術師オーフェンはぐれ旅』という作品は、一言で言うと『暗い色気がある作品』と言えると思います。特に2部(東部編)。絶望とは何かをテーマにしている所からもそれを感じる。
いや重い色気、柔らかい重圧のある作品と言った方がより近いか。矛盾した表現だけど最後。
レティシャ・マクレディや聖域の女を筆頭に疲れた女が多いのもそれを象徴している。
この作者さん性格地雷女しか書けない呪いにかかってるんじゃないの? 作中の各ドラゴン種族の呪いよろしく。
あと、最近の作風をまた聞きするに、この人もハンタのゴンさん化や幽遊白書文庫版の虐殺おまけ漫画でキャラクターを木っ端みじんに破壊した冨樫と同じく
【自分で創作したキャラクターを壊して物語を作る悪癖】
を持ってるんじゃないのとわたしは疑っている。
チャイルドマンが実は間抜けな人物だったのは良いとして、コミクロン女化はやりすぎだろー。
正直秋田さんて自分で生み出したキャラクターを雑に扱う人ですよね。と、わたしは感じた。
別にいいけどね作者の権利にそれも含まれるから。読者の権利は買うか買わないかの2択よー。
この作品のアニメは1990年代のものと2020年のものがありますが、アニメーションの技術としては1990年代の方のアニメが上質だと思います。わたしの目には。
ただ、原作に沿った形という視点では2020年のアニメの方が適してはいる。
――でも、原作に沿うなら、一見グイグイ他人を引っ張っていく風に強がって、他人には見せないながらもグラグラ揺れまくって、マジクから内心、
『この人実はたいしたことないんじゃないの? 特に人にものを教えるのが下手すぎるよね何を言ってるのか全然分かんないよこの3流教師』
『トトカンタじゃ塩と水だけで生息してて実家の宿で破壊行為するだけの金貸しヤクザだったし魔術の素質も僕の方が上だし、上手なのケルナグールだけじゃないか』
なんて幻滅されてた主人公の信念や意思が一本筋の通ったものになるまで――
つまり、主人公かつ作品そのもののテーマ(伝えたい事)がはっきり出るのが2部終盤
(東部編――つまり最接近領の領主や聖服の男やレッドドラゴン・ヘルパートやライアン・キルマークドが出てきて、自分ら以外を見殺しにする聖域のアイルマンカー結界縮小プロジェクト(核シェルターに政治家だけ入って国民は全員棄民政策みたいなニュアンス)が露呈してくる頃)
( )内の絶望に対し、コルゴンとオーフェンがそれぞれ違った結論を出して進むのが、この作品のクライマックスなのに。
(コルゴンがアニメや漫画のヒーローっぽい結論を出し、オーフェンがやけに地に足につきまくった結論を出す。ヒーローっぽいのは明らかにコルゴンの方である。
ハリウッドのスターになりそうなのもコルゴンだし、スキャンダルでスターからの転落人生でゲロゴンになりそうなのもコルゴン。
てゆーかコルゴンの相棒のコミクロンの方が、もっといい結論出しそうではある。2部終盤ではすでにあの世の人だけどコミクロン。
オーフェンは平凡な人生に憧れている節がある。トトカンタでの生活が異常すぎた反動だろう。元締めなり死んだ魚でレスリングなり変態執事なり無能警官なり、頭のネジの吹っ飛んだ前髪ぱっつんポニテの女魔術士なり、何よりサモアペット博士なり)
だから、原作に沿うなら1年~2年アニメ放映続けないと無理っすよ……。
そういう意味でも、1990年代の方でオリジナル展開をしたアニメの方が賢かった。
この人の言葉で一番共感したのは、
「主人公ってのは、物語の最後の方では血まみれで荒野に佇むものだろ――」
というニュアンスの言葉。これはホントわたしも同じ考え。
あと、作中キャラ(特に東部で幽霊(ダミアン=ルーウ)に惑わされ続けてブチきれる前の魔術士っぽい金貸しヤクザさんとその姉)がチャイルドマンを神聖化していたが、正直王都の魔人プルートーの方が実際は有能だったなと読んでて思った。
2部の描写はおかしいから、騙された人も多いだろう。
第三者でなく主人公の認識を基準に文字が進むため、仮に
【主人公の認識が現実と剥離している場合、文章そのものが嘘のままページが進んでいく】
からだ。嘘同盟。主人公が自分の強さを過小評価している場面とかが、その現象がわかりやすい。
「嘘こけよ。超人を否定しているお前が一番超人を肯定した能力になっているだろ」
と、何度思ったことか。ハーティアの方が、まだ超人否定思想に沿った感じになっている。
行動自体は超人を肯定していないんだけど、能力そのものは超人そのものである。尖り目の魔術士っぽい金貸しヤクザさん。
チャイルドマンは、完璧っぽい雰囲気を出すのはうまいがどこかヌけてる。
戦い方でも普段の生活でも、勘や直感に頼るスタイルを貫きすぎてて、勘が外れた時の反動が大きすぎる男。
トトカンタでアザリーにボディチェンジされた時の大ポカなんて、プルートーなら絶対にしないだろう。
要は、なまじ自分の能力が高いがために、
【失敗に慣れていないまま大人になった子供人間】
それを自分でも自覚していたからこそ、チャイルドマンなんて罰ゲームみたいな名前を自称したんじゃないの? アルフレド=マインスさん。
彼に限りませんが、そして小説の業界に限らずアニメゲームでも顕著なのですが、
『過去の作品の焼き直しや食い潰しやめてもらえませんか』
『綺麗に完結した作品を自分で掘り起こして、蛇に足を付け加えないでください』
という気持ちはある。ドラゴンボールとかドラクエとかFFもデジモンも他の作品も何回も何回もリメイクしてるから同じ気持ちがある。北斗の拳イチゴ味だけは問答無用で大爆笑したけれど。あれは例外の良い例。
秋田さんの場合は、元々4部描くの乗り気じゃなかったけど周りに押されて、じゃあファンに答えるのも仕事人としての務めかということで、義務感で4部描き始めたって自分で言っていたような気がするからまた違うんだろうけど。2部で伝えたいことは十分伝わってるから後は蛇足だよ。はぐれ旅は。
過去の食い潰しより、新作で皆を面白がらせてほしい。
余談だけど主人公の得意技の寸打って、悠久山安慈の二重の極みでダブルカウンターの形で吹き飛ばせるよね。エネルギーの伝達においては、二重の極みに勝る物理現象はない。いや人間業じゃないけどさ。安慈和尚は体中のどこからでも極み打てるし、って思ったことがある。
そんな感じの事(強さだけで世界は制することはできない)も秋田さん本人が思ったから、実質的なラスボスがあの聖服の男だったんだろう。終盤ずっとひとりモータルコンバットやってたからな、聖服の男。
あと、マジクは自分の実力だけでキレイな方法だけで『たったひとつの冴えたやり方を模索する』タイプに見えた。
こういうわたしみたいな聖母のような慈悲を身に宿したいとする性格の者は、the body――スタンドバイミーのクリスよろしく割とあっけなく殺される可能性が高いのでかなり注意しなければいけない。
絶対こっちが潔癖なのにつけこんで殺そうとしてくるからな。ダーティーな野郎どもは。
マジクがわたしと性格同じだわ。マジクは仙水忍になる可能性がかなりすさまじく高い。
何があろうが汚職のような汚いやり口は認められない。
キレイなものだけでどこまでも、宇宙の果てすら超えていこうとまっすぐ突き進むタイプがわたしだから、マジクもそんな感じだろうと思わざるを得ない。
マジクが枯れた理由、わたしにはとても共感できる。
絶望を胸に、それでもまだ希望も捨てられない。
絵描きと小説家の意思疎通がうまくいってないんじゃないかって思ったことが、このはぐれ旅でひとつだけあります。それは――
『ダミアン・ルーウの容姿』
だってさ。アーバンラマでのレッドドラゴン・ヘルパート&ライアン・キルマークドとの死闘から出てきたダミアンの描写でわたしは
『すっげぇ頭のかってえ融通の利かねえ嫌味サラリーマン』
みたいな感じでイメージしていたのに、最接近領での惨劇での初めてのダミアン・ルーウの挿絵が
『スーフーヤ系クラゲおじいちゃん』
なのに度肝を抜かれた。あれ描写ちがくない!? ライアン・キルマークドとの決戦編で30歳くらいの描写だったよねダミアン?
草河遊也さん……アンタあの文からスーフーヤ想像したんスか…………あの絵……。
あと、秋田世界の女はみんな疲れすぎてて、いくら美人でもお近づきになりたくないというのが明確な欠点。なんでそんなに疲れた女描くのうまいの秋田さん。怖ぇぇっす。ティッシとか特にこええっす。女の性格がみんなやべえ。
基本光を求める性格のわたしとしては、暗い穴に落ちたがるようにまで見えてしまう秋田世界の女キャラクター。
特にアザリーとレティシャが性格ひどすぎるわ。
最終巻で『Vガンダムを見ていて、オーフェンの物語を思いつき始めた』
って言っていたけど、Vガンダムのガンダム3大悪女に数えられて、演じた声優さん本人からも恐れられたカテジナ=ルースの方がまだアザリーよりは性格マシですよ……。
なんかレティシャも4部じゃ鬼ババアになってるって噂聞いたしなぁ、自分じゃ読んでないけど4部。元々ヒステリーだったから順当な姿なんだけど彼女は。
秋田さん絶対大人になる過程で女に碌な目に遭わされてねぇな。
わたしは逆に女を神聖化する男に育っちまったが。それでもわたしは女ひいきする方のフェミニストとは違うけれど……。
要するに、わたしが一皮むける際に出会った彼女たちが人間の領域超えすぎなんだよ。長南年恵さんや八尾比丘尼やミリン・ダヨどころの話ではない。
なんなんだよわたしの心を奪ったあのかぐや姫ふたりは。竜神かよ。
最後に、別に非難するつもりはないけれど、と断った上でこの話題を。
銀魂に出てきた吉田松陽こと虚は、魔術士オーフェンはぐれ旅2部に出てきたライアン・キルマークドと同じ仕組みの不老不死っぽい。つまり生き返りを繰り返す程記憶も人格もぶっ壊れる絶望蘇生。
肉人形の、原子の体で不老不死になったところでろくな目に合わないんだよなあ。最低でも幽子、できれば光子の体で不老不死にならないと。肉人形は、魂を乗せるモビルスーツとしては粗悪すぎる。もっともっと量子力学と神そのものの学問を学ばないと、光の体は得るのむずいなあ)